豊洲 SEINセミナー [耐震設計]
豊洲に出かけた。
NTTデータのSEIN La Crea (大臣認定プログラム)のセミナーがあった。
名古屋大学大学院 福和伸夫氏の講演があった。
我々の生きている間に東海・東南海地震は必ず起こると言う主張は迫力があった。
**************2009年6月19日加筆*****************************
SEIN La CREA
「SEIN La CREA」はNTTが始めた大型電算機の科学技術計算サービスDEMOS-Eでの構造計算プログラムBUILDの子孫だ。
私は1985年頃BUILDを使用していた。電話回線を利用したもので、データーを打ち込んで2-3時間待つと結果が送られてくる。タイムシェアリングでは無く、バッチ処理だった。
10,000平米程度のRC造6階建事務所の構造計算で計算機使用料が百万円を超えた記憶がある。
勿論不慣れなこともあったが、当時の電算機使用料は高かった。
その後EWS(小型電子計算機)に搭載され、分散処理型となった。
現在ではノートパソコンで同程度以上のものが使用できる。
NTTは(鳩山邦夫代議士で有名となった)東京郵便局を設計した吉田鉄郎や山田守などの逓信省営繕課の伝統がある。その伝統はNTTファシリティーズ等に受け継がれているはずだ。
豊洲
東京の南東に位置する。北は越中島-門前仲町、東は新木場や夢の島公園、南にはビックサイト、西に行けば晴海-銀座に出る。
豊洲は関東大震災の瓦礫処理の為埋め立てられたという記述がWEBにある。
IHIの工場跡地などに、超高層の事務所ビルやマンションが数本建てられている。
姪が高層マンションに住んでいる。
福和伸夫の講演
SEINセミナーの基調講演は名古屋大学の福和伸夫氏だった。
軟弱埋立地の超高層ビル最上階で耐震安全性について話をするとは皮肉な事だと氏は語った。
福和伸夫氏を私は知らなかった。
主に名古屋で活躍されているせいもあるだろう。
ホームページもあって彼の主張は詳しく知る事が出来る。
今回の講演で彼は、「埋立地のような軟弱地盤の上に現代の主要な建築が建てられており、人口も密集している事は問題である。超高層などを軟弱地盤に建設するなどもっての外」ということを誇張もあるが強調していた。
兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は直下型の短周期の卓越した地震だった。0.4~1.0秒ぐらいが卓越している。
東南海・南海地震が起きると関東平野には約2分後に6秒~10秒の長周期地震動が到達し、約3分も揺れが続くというシュミレーション結果が発表されている。
第一次固有周期6秒と言えば、鉄骨造の事務所ビルなら50階建以上、RCのマンションなら70階建以上が相当する。かなり高い建物である。70階建のマンションは日本に無い。
鉄筋コンクリート造の5階建てアパートの固有周期は0.3秒程度でかなり短い。共振の恐れはない。
東南海・南海地震の長周期地震動のことだけを考えれば、超高層ビルやマンションを避けた方が良い事となる。
だが関東の直下型地震も想定されるので中高層が安心と言うわけではない。
以前にも書いたが、建築構造技術者は地上の建築物に眼が向いていて、建築基準法の規定さえクリアすれば良いという考えが強い。実際それだけでも大変なのだが。
現在の建築基準法の耐震思想は巨大地震の際建物が倒壊しなければ良いと言うことである。
建物の機能停止や、家具転倒などによる人的被害の防止については眼をつむっている。
(むろん中規模地震に対しては建物に被害を出さないという規定もある)
我々が生きている間に必ず巨大地震は起きると断言された福和伸夫氏の注意喚起を肝に銘じてこれからの建築構造設計に携わろう。
危険度判定 [耐震設計]
岩手・宮城内陸地震での応急危険度判定の集計が発表されている。
6月19日の朝日新聞によると危険判定数は全体の6.5%だと言う。
「危険」と判定され「赤紙」が貼られればその建家の内部に入る事は危険だと周知される。
過去の主な地震と比較がなされている。
発生年 判定総数 危険の比率
阪神・淡路大震災 1995 46,610 13.9%
鳥取県西部地震 2000 4,080 10.9%
新潟県中越地震 2004 36,143 14.5%
福岡沖地震 2005 3,148 16.4%
能登半島地震 2007 7,600 16.2%
岩手・宮城内陸地震 2008 3,169 6.5% (速報値)
過去の比率の半分以下である。
新聞からは木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の種別や住宅か否かは判明しない。
全体の傾向は間違いなく把握できる。
要するに今回の地震による建築物の被害は大幅に少ない。
今回の地震の卓越周期が短いことが一つの要因だと記事は言っている。
またある建築士の意見として「貫構法(伝統構法)が倒壊につながらなかった原因のひとつでは」と
語らせている。
マスコミはこう言った見解を好んで記事にするが、慎重に判断しなければならない。
過去の北海道などの寒冷地の地震では建家は防寒の為、窓が少なく、
壁が多いとも言われこのことが被害を少なくしていると言われていたが、
今回の記事にはその事についての言及は無い。
藤木良明著「マンションの地震対策」 [耐震設計]
筆者は一級建築士、工学博士、愛知大学教授、マンション学会副会長である。
題名からするとお気軽な「HOW TO」本かなと思った。
だが、かなり中身の濃い内容だった。
とりわけ後半の阪神淡路大震災後のマンション建替えや補修について
実話から引き出された問題点や教訓は貴重なものだ。
安易に建て替えの道を選ぶべきでは無いと言う主張がメインのように思う。
3/4の賛成を得て建て替えを選んだとしても抵当権の問題や、マンション全体と棟ごとの問題もある。
容積率の変更などにより、既存の大きさ・戸数が確保出来ない場合もある。
構造技術以外にも多くの問題が立ちはだかる。
住民の日頃からのコミュニケーションと大地震に対する心構えも重要と説いている。
木造建築物の被害と対策 建研講演会 [耐震設計]
木造の部分のほんの一部を紹介する。
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2007年能登半島・新潟中越沖地震関連報告
「木造建築物の被害と対策」
構造研究グループ 上席研究員 河合直人
VIまとめ
平成19年能登半島地震及び新潟県中越地震では、木造住宅に
も甚大な被害が生じた。建研等の調査によると、大破、倒壊な
どの大きな被害は、土塗り壁を有するような比較的古い構法の
住宅。倉庫、車庫、納屋の類、及ぴ店舗併用住宅などに見られ
た。しかしながら、詳細調査からは、建築基準法の要求壁量の
60%~70%以ト壁量があれば、大きな被害に至っていないという
結果が得られている。主要な被害原因に、耐力壁を主とする耐
震要素lこ不足があることは明らかであろ。
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今回の講演会の資料全文はホームページでは未だ公開されていない。
その内公開されると思う。
木造の被害関係の報告書が下記にある。
講演会の報告のと多くは重複しているので紹介しておく。
http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/activities/other/disaster/jishin/2007niigata/houkokusho/20070824/4.pdf
建築研究所ホームページ 新潟県中越沖地震情報
中越沖地震に関する調査について
(4)木造被害調査
耐力壁の終局せん断耐力 [耐震設計]
建物の構造計算でもっとも厄介な「式」のひとつ
耐力壁の終局せん断耐力の算出式。
単位はニュートン(N)
電卓で計算すると何回も違う答えが出てくる。
EXCELの表にしてやっと扱える。
10階建ての事務所の1階の耐力壁である。
上記の例で約10,000kN(約1000t)のせん断耐力を持つ。
認定プログラムコンソーシアム [耐震設計]
「大臣認定構造計算プログラムに関するコンソーシアム」とはなんであろう。
任意団体?、費用は誰が出しているの?
天下り団体を作るのが得意なところだから将来は、財団法人?
構造計算のプログラムを大臣が認定すること自体、
おかしいと考える人がいる。
私もそう思う。
ソフトの不具合で起きた損害を補償は出来ないのだろうから。
22日(?)研修会の募集が始まった。
急な話である。
建築行政情報センターや建築防災協会などのHPを見ても出ていない。
(追記 25日朝確認したらICBAに記載されていた)
一番情報が早い「建築構造設計会議室」の投稿で知った。
ドタバタしている。
23日の夕刻、会場を変更。
明治記念館300名 → ビックサイト1000名x2回。
何を研修するのだろう。
NTT作成のSEINの使い方?
それは変だ。
「一般的に言って認定プログラムはこうなります。」
「こんな使い方になります。」
「こう言った建物しか設計できません。」
という事になるのだろう。
何か釈然としないが、
国交省が何をしようとしているか?
知る必要もある。
申込書をFAXして置いた。
阪神大震災13年 [耐震設計]
震災の後、3月に東灘区から三宮まで見に行った。
JR線の車窓から木造住宅がなぎ倒されているのを見た。
満員のバスからは高速道路が倒れているものも見た。
三宮駅前の横断歩道に
「見物人は来るな」
と大きく書かれていた。
なぜか、うな垂れて帰ってくるしかなかった。
あの重苦しい心持ちを忘れてはいけない。
全体幸福(降伏)気候(機構) [耐震設計]
明快な全体降伏機構とする。
未完本の364頁365頁に崩壊メカニズムとDsの判定について解説があるが
何回読んでも頭に入らない。
307頁にある「図6.2-7 崩壊メカニズムの例」が良くない。
モデル化しているのでリアリティに欠ける。
建築学会の指針に解説と図がある。
鉄筋コンクリート造建物の
[靭性保証型 耐震設計指針・同解説]
図が判り易い。
実感出来る。
建築基準法では崩壊メカニズムについて
①全体崩壊形、②部分崩壊形、③局部崩壊形の3種類を認めている。
しかし「本来は①全体崩壊形が良い」のように歯切れが悪く分かりづらい。
建築学会の基準 「靭性保証型 耐震設計指針・同解説」の説明のほうが
分かり易い。「降伏機構」と「崩壊メカニズム」との用語の違いもあるが理由は知らない。
「崩壊メカニズム」の方がカッコ良いが建家が崩落するような語感がある。
**************[靭性保証型 耐震設計指針・同解説]より**************
3.2 柱および梁の計画
3.2.1 柱および梁の降伏ヒンジ想定部位
降伏ヒンジは,原則として,各層梁端および1階柱脚以外では想定しない。
3.2.1 降伏ヒンジ想定部位の例外
次の部位には例外的に降伏ヒンジを想定してもよい。
(1) 最上階柱の柱頭
(2) 地震力により軸力が小さくなる外柱
3.3 耐震壁の計画
3.3.1 耐震壁の配置と形状
耐震壁は,原則として,必ず下層階に連統する連層耐靂壁とする。平面的,立面的にバランスよい剛
性分布となる耐震壁の配置を計画する。
3.3.2 耐震壁の降伏ヒンジ領域
耐震壁の降伏ヒンジは,1階壁脚部に想定する。ただし,壁脚部の曲げ降伏以前に,壁下基礎に浮き
上がり回転が生ずるように計画してもよい。
3.3.3 フレーム部分の降伏機構
耐靂壁フレーム構造に含まれるフレーム部分の降伏機構も,原則として,3.2節の規定に従う。ただし,
耐震壁に十分な強度を確保する場合には,柱に降伏ヒンジを懇定してもよい。
2つの耐震補修工事完成 [耐震設計]
最近2件の耐震関係の補修工事が完成した。
それぞれ意義深い。
1.能登半島地震で被災した洋品店
震災で大きく傾いた住宅でも
建て替えずに直せる
2007/11/30 ケンプラッツ
3月25日に発生した能登半島地震
被災直後は隣の構造物と隣家にもたれかかっているように見える。
地震で大きく傾き「立て起こし」で改修した。
技術的内容の詳細がもう少し欲しい。
2.コンアルマーディオ横濱鶴見
http://www005.upp.so-net.ne.jp/conarmadio/
アネハの構造計算によるヒューザーの分譲マンションである。
11月25日に補強改修工事の竣工式が行われた。
プレキャスト・コンクリート製の柱・梁を、
建物の北側と南側に取り付ける外付けフレーム工法。
工事期間約8カ月間、総事業費約2億7000万円。
耐震改修工事の設計・監理:KR建築研究所
施工:紅梅組(横浜市西区)
費用の負担など今後続くので大変であろう。
しかし改修が完了し再入居出来たことに
ひとまず拍手。