木造軸組許容設計(2008年版) [木造]
2ヶ月ほど前から改訂版が出ると聞いていた。
660頁ほどある。
前の版(平成13年)が414頁ほどだったから5割ほど厚くなった。
内容をまだ読んではいない。
平成19年の建築基準法改正に基づいた「構造計算概要書」の例が載っている。
色は前の版の「グレー」を踏襲しているので、「グレー本2008年版」とでも呼ばれるのか。
内藤多仲設計 [木造]
古い木造の工場を解体し、事務所を新築したいと言う相談があった。
古い「青写真」の図面のコピーが送られてきた。
昭和16年、工学博士内藤多仲設計の文字が見える。
解体はもったいないと思うが、仕方ないか・・・
何か記録は残せないかなとも考える。
4分割法 [木造]
国交省が全国で、しかも無料で開催している。
もちろん天下り団体を動員している。
どなたかの感想で、「良くまとまっている」という感想を聞いた。
私もそう思う。
住宅の構造的な偏心をチェックする方法として「4分割法」なるものがある。
この講習で使用されているテキストの説明はきわめて分かりやすい。
今のところ講習会に参加しないとこのテキストは入手できないようだ。
住宅木材センター(南砂町) [木造]
(財)日本住宅・木材技術センターで「木質構造をまなぶ会」を受講している。
今日は第2回目。
今日の講師が「住木(じゅうもく)センタ」と略していた。
そのセンタの南側に写真の「SUNAMO(スナモ)」が10月9日オープンする。
南砂町ショッピングセンターである。
講義の昼休みに野菜ジュースでも買おうと出かけて見たが、営業はまだだった。
永代通りは結構車の往来が激しい。
大きなマンションが並んで建っているのだが、
この周りに現在のところ、店はほとんど無い。
順天堂の高齢者医療センターと言う大きな病院が近くにあり、
その中にローソンがあるのみ。
12時15分頃覗いて見たが、レジ前の人の列は店の中を埋め尽くしていた。
今日は寒冷前線が南下しつつあって、強い南風が吹いていた。
汚水臭がした。
東京湾の臭いかなとその時は思ったが、
砂町の下水処理場が近いことを後で知った。
伝統構法のシンポジウム [木造]
シンポジウム自体は7月12日に開催されているので、やや鮮度に欠ける扱いとなったことは何故だろう。
さて、会場は新宿の工学院大学。予想を上回る約400人の参加で会場は膨れ上がったと書かれている。
【運営者団体】これからの木造住宅を考える連絡会
【参加団体】住宅産業研修財団・優良工務店の会/職人がつくる木の家ネット
伝統木構造の会/日本曳き家協会/日本民家再生リサイクル協会/緑の列島ネットワーク
古川保氏(すまい塾古川設計室)、綾部孝司氏(綾部工務店)、大橋好光氏(武蔵工業大学教授)、
後藤治氏(工学院大学教授)らの発言が要約されている。
国交省の伝統構法に対する方針が越海室長の発言として載っている。
「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」(事務局:日本住宅・木材技術センター)では、
今年から3年間にわたって、E-ディフェンスでの実大振動実験などで伝統構法の再検証を行い、
最終的に「伝統構法を考慮した仕様規定」を告示化すると言うもの。
国交省の方針は限界耐力設計法の柔軟な運用ではなく、新たな仕様規定を設けることのようだ。
私自身は「限界耐力計算」を経験したことはないので正確な判断が出来るわけではないが、
平屋や2階建て木造の構造解析に1質点系のモデルを基にする計算方法が最適なものなのかどうか
と言う違和感はある。
E-ディフェンスの実物大実験は結構なことだが、3年もかかると言うのは永過ぎるのではないか。
安全側の大まかな判断にも基づいた告示なら明日にでも出せるのではないか、
不十分であればまた改正すれば良いはずだと私は考える。
安易すぎるだろうか。
坂本功著「地震に強い木造住宅」 [木造]
1997年9月に初版発行。
阪神・淡路大震災の2年半後。
著者は当時、東大教授。
この本は阪神・淡路大震災を動機に纏められたものであるが
坂本氏の木造に対する考え方が全て述べられている。
終わりの方の章には奈良の薬師寺や唐招提寺の話も出ている。
日本の木構造研究の中核の一人の考え方が良く判る本である。
木造の家は地震に強いか 杉山英男著 [木造]
杉山英男著「木造の家は地震に強いか」
盛岡発のUターンラッシュの自由席にて読了した。
図書館から借りてきた本である。
新書ブルーバックス(1985年)出版であるが絶版のようだ。
杉山英男氏は木質構造関係者なら知らない人はいないほど有名な方だったらしい。
私は知らなかったが。
四国新聞の訃報がWEB上に残っていた。
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杉山英男氏死去/東大名誉教授、木質構造学
杉山英男氏(すぎやま・ひでお=東大名誉教授、木質構造学)
2005年2月18日午前3時30分、すい臓がんのため東京都杉並区の病院で死去、
79歳。静岡市出身。自宅は東京都武蔵野市吉祥寺東町2の23の19。
葬儀ミサは21日午後1時半から武蔵野市御殿山1の7の8、
カトリック吉祥寺教会で。喪主は妻邦子(くにこ)さん。
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杉山英男氏関連記事にやや物騒なものを見つけた。
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「住宅・健康関連本」の独善的週評 鵜野日出男
.....1959年の伊勢湾台風にかこつけた「火災・風水害防止のための木造の禁止決議」。
10月25日に開催された建築学会の緊急集会で大会決議として可決された。
耐震性が理由だというならまだ分かる。風水害を理由に禁止するというのは筋が通らない。
この背景にあったものは軽量形鋼の出現。
公的機関の実大実験によれば軽量鉄骨は出火後25分間もたたないうちに完全倒壊。
それなのに、軽量形鋼は木造よりも優れた「簡易耐火建築物」として政治力で認定された。
鉄鋼メーカーと建築学会と建設省。この3者がリンケージした木造叩きという安っぽいシナリオ。
杉山先生の怒りが行間に溢れている。
同じ思いを私も何度か経験した。
後に住宅局長になり長崎から衆議院議員になった松谷蒼一郎氏。
氏がまだ建築指導課長の頃は鉄鋼メーカーのスポークスマンと言われていた。
鉄骨プレハブ振興一本ヤリでツーバィフォーを敵対視。
そのため日本にツーバィフォー工法をオープンな形で導入したホームビルダー協会は、
鉄鋼メーカーのスポークスマンによって締殺された。.......
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杉山英男著「木造の家は地震に強いか」は新書ながら、かなり専門的な内容の本である。
日本の「伝統構法」信奉者が読んだら卒倒しそうな内容だ。
耐力壁・筋違い・金物・RC造布基礎などの推奨の本だからだ。
でも、木構造を志す人は読む義務は有りそうだ。
阪神・淡路大震災前に書かれているが、いまだに新鮮だ。
日本の木構造についての議論は理論より、まず各人の「思い入れ」から
出発する。感情が先立つ。よってなかなか纏まらない。
無理に纏める必要はないが・・・・・
神奈川県立公文書館 [木造]
神奈川県の建築指導課が主催する
木造住宅耐震実務会(技術者向け)に行って来た。
工学院大学の教授と設計事務所の方の講義。
地震被害の歴史や木造耐震診断手法の説明。
講習会の行われた神奈川県立公文書館は、
二俣川駅から徒歩17分の所にある。
二俣川駅は横浜駅から西に10km程のところ。
神奈川県の運転免許試験場や県立がんセンターなどに隣接している。
公文書館の建物が立派(すぎる)のに驚いた。
プレカットはいつ始まったか? [木造]
住宅用木材のプレカットはいつ始まったのだろうか?
先日NHKのニュースを見ていて
茨城の巨大プレカット工場が出てきた。
ニュースの話題は確認申請の停滞で住宅着工が
前年比4割ほど落ち込んでいると言うもの。
プレカットに関するホームページから拾ってきたデータを
補完してプレカットによる加工率のグラフを
作成すると次のようになる。
私が作成した物で厳密性に欠けるが大筋は間違いない。
感想から言えばプレカットの歴史はさほど古くない。
それもそのはずCAD/CAMとともに発展したものだから。
「建築構造計算の電算化」や「図面のCAD化」に伴走している。
プレカットが始まったのは 昭和51年(1976年)
伸び始めたのは 平成2年(1990年)ごろ
5割を超えたのは 平成12年(2000年)
それにしても順調に拡大したものだ。
最近2、3年は頭打ちであると言う記事もあったが。
プレカットCAD入力は中国大連にて行っているとの文章もある。
30坪の住宅でプレカット代は15万円程だと言う。
あまりにも安い。
この陰で大工さんによる『墨付け』『刻み』は無くなってきている。
大工さんの技は”文化財化”してしまう。
伝統構法が大変なことになっている [木造]
木造の伝統構法が大変なことになっている
伝統木造構法で確認申請をすると
125万円も掛かるという話があった。
そんなには掛からないだろう確かめた。
宮城県の場合150m2の木造の場合
確認手数料 建築確認 14,000円 完了検査 16,000円
限界耐力計算による
構造計算適合性判定手数料 140,000円または180,000円
高い方の合計で210,000円
これが役所関係の手数料。
伝統構法の確認申請についてなにか読んだような気がした。
建築士会の月刊機関誌「建築士」2007年9月号に記載があった。
長いが引用する。
*************引用開始********************
伝統建築を守れ~限界耐力計算による木造耐震設計の普及
(株)竹中工務店九州支店設計部構造G課長 大塚真裕氏
2. 新しい設計法~限界耐力設計法
木造建物の構法は,パネルや筋違いといった耐力で地
震に抵抗する在来軸組構法,"貫き"や"ほぞ"といった
仕口部の変形性能で地震に抵抗する伝統構法,また,そ
の中間の性格を持ったものなど多様である。一方,建築
基準法・同施行令・告示等では耐力壁や
金具補強を優先
する耐震性能評価がなされており,その結果,地域性の
ある伝統構法には現行の耐震評価法は適用できず地域性
豊かな伝統木造建物が設計されていないのが現状である。
平成12年の建築基準法・同施行令改正で新たに提案さ
れた限界耐力設計法によれば,告示に規定される木造に
関する仕様規定のうち耐久性等関係規定のみを守れば良
く,継ぎ手や仕口に金物を使用しない伝統木造構法も設
計が可能となっている。この具体的な方法にっいては,
日本建築構造技術者協会(JSCA)関西支部の木造分科会
が中心となり,2004年3月出版の「伝統工法を生かす木
造耐震設計マニュアル」等のなかに示されている。これ
によると "貫き"や"ほぞ"といった伝統工法独白の工
法ごとの復元力特性が振動実験により定められており,
建物の特性に応じた限界変形角を設定することで耐力を
計算することができる。また,1質点系への縮合や応答
値の算出も行うことができ,これと耐力とを比較するこ
とで耐震性能評価が可能となっている。
**** 一部省略 *********
さて,本年6月20日に改正建築基準法が施行となった
が,限界耐力設計を行った建物の確認審査は,これまで
の主事審査に加え適合性判定機関での審査が付加される。
現在,福岡市での指定適合性判定機関は,福岡県建築住
宅センター,日本建築総合試験所,日本建築センターと
なっているが,限界耐力計算を行った建物は全て日本建
築センターでの審査となる。今後,歴史深い伝統木造工
法を限界耐力設計で実現する場合は,小規模な住宅であ
っても日本建築センターでの審査ということになる。木
造の限界耐力設計は理論的背景とクライテリアをしっか
り理解しておけば福岡県の適合性判定機関で十分審査が
可能であり,将来的にはこのような一律の規定をさけ,
柔軟な審査体制が許容されることを希望している。現在,
JSCA九州支部の木造部会でも川崎部会長のもと,木造
建物の限界耐力設計について勉強会を開催し専門性の高
い技術者を育成中である。地震に対して安全な都市が形
成されるためにも,幅広い知識と審査判定能力を持った
人材の育成が急務であるが,一方で木造建物の限界耐力
設計を普及させることにより,文化財の保護や耐震改修
を促進させ,安心で豊かな伝統文化が共存する社会をっ
くることにもっながると考えている。
************引用終わり*************************
この文章によると日本建築センターにて伝統構法の
限界耐力計算の適合性判定は受付けているように思えるが。
しかし実際は大変なことになっている。
埼玉の団体のホームページ
無断転載を禁じているので概要を紹介する。
非常に興味深い。
埼玉県鶴ヶ島市上広谷47-2 森と職人支援室
http://www7a.biglobe.ne.jp/~mori-syokunin/index.htm
そのホームページの
9) 家づくりについて・・・建築確認申請について
8月6日森と職人支援室が電話で12の機関に問合せした。
日本建築センターでは伝統木造構法の「適合性判定」の実績はない。
非常に困難であるとの反応。
日本ERI、ビューロベリタスでは可能性がありそうだ。
他のところはほとんど壊滅状態である。
電話での受け答えの記録がリアルである。
確認申請料125万円どころか申請の受付けさえ、されていないようだ。
さらにホームページの中、
7) 伝統構法の説明・・・2007年まだ伝統構法は未確認のもの
のなかに驚くべき内容がある。
現行の限界耐力計算による伝統木造構法に
東大と京大、関東と関西、
官僚と伝統構法業界の確執があり、
伝統構法の存続さえ危ぶまれる状態なのだ。
推測であるが伝統構法による建物は6月20日以降建てられていないようだ。
気仙大工の皆さんのみならず、全国の伝統大工技能継承者は
兵糧攻めに遭っている。
このままでは2~3年で”タマホーム”が全国を席巻、
伝統構法は絶滅してしまうか!!??